ベトナム 冷凍食品

現在、ベトナムは「食」に関し転換点に差し掛かっていると言われています。対外的には世界でトップ15に入る農産品輸出国ですが、農産品の多くは完成品として輸出されているわけでなく外国産ブランドの原材料として売られているケースが多いです。従って、輸出で得る付加価値は原材料分に限定され、自らのブランドを築くことが求められています。

対内的には、「食」に対する年率10%以上の国内消費増加、外国直接投資(FDI)規制の緩和により食品加工(food processing)に対し外資100%の会社は400社/合弁は80社が進出(2018年時点)、世界各国との自由貿易協定(FTA)による関税引き下げに伴う効果等、ベトナム食品加工分野の魅力度向上(中国市場に続くFDI候補国、相手国の輸出期待)等、食品加工分野の成長は著しく政府は2025年までの重点分野に指定しています。但し、国内に進出するFDIはバリューチェーン構築の難しさに直面します。

対外的、対内的に共通する課題はバリューチェーン構築です。特に、国内に進出するFDIの売り先最終市場が外国である場合はGlobal Value Chain(GVC)が問われてきます。今回はバリューチェーンについて検討します。

輸出産品
以下はCity Pass Guide(ベトナムの旅行情報会社)の「Vietnam’s Food Exports High Output, Low Value」の要旨です。

ベトナムは緑茶(green tea)と紅茶(black tea)を世界50ヵ国に輸出しています。特に、パキスタン、台湾、ロシアへの輸出が多いです。ベトナム茶として輸出されているのは緑茶とウーロン茶(tea bagとして製品化)の少量に限定され残りは紅茶の茶葉を原材料として第三国に輸出され外国メーカーのブランドとして最終市場で売られています。

ベトナムはカシューナッツ生産大国(世界生産量の50%以上)ですが未加工のままで輸出され、最終製品の付加価値の18%に過ぎません。もし、塩焼きの過程を経て輸出されれば付加価値は60%にジャンプします。

ベトナムのコーヒー豆は焙煎の加工過程を経て輸出されますが、最終製品はネスレ(Nestle、スイス)、クラフトフード(Kraft Foods、米国)、ラバッツァ(Lavazza、イタリア)のブランド名で売られます。

ベトナムは新鮮野菜と果物の生産国でもあります。それらの輸出は地続きの中国市場が大半(輸出の80%以上)です。野菜と果物の収穫期後のロス(損失)は30%以上で、加工技術が整備されればロスを付加価値に転換可能です。

City Pass Guide “Vietnam’s Food Exports High Output, Low Value”

ベトナムはバリューチェーンの初期工程でビジネスを行っています。このバリューチェーン構築は容易ではないですが、付加価値を上げるためには避けて通れない目標です。

一次産業の価値を活かすバリューチェーン
加工原料調達に際し農業(一次産業)と食品加工業の連携は必須です。農産品の価値は「食味」と「安全性」で決まります。その二つの要素は加工品を売る市場(国内市場あるいは輸出市場)が求める条件に依拠します。

現在、ベトナムの食品加工分野は発展途上で、一次産品と加工業の連携はFDI頼みが現実的です。例えば、インドのCCL ProductsはベトナムのDak Lak省に製造拠点を構え、アラビカ種のコーヒー豆を原料にフリーズドライのコーヒーを生産しています。Dak Lak省はコーヒー豆生産に適す高地でCCL Productsは農家と契約数量を取り交わし需給調整をすることなく契約数量を買い付けています。

製品はインドを含め欧州に売られています。要は、最終市場における「食味」と「安全性」に関するCCL Productsの戦略にもとづくベトナムでの契約栽培です。

日本の豊通食糧株式会社(豊田通商グループ)はLam Don省にJapan-Da Lat 株式会社を設立しダラット高原の冷凍野菜を生産し日本に輸出しています。原材料調達は徹底した調達基準をサプライヤーに課し自らも農家との契約取引を行っています。

加工後、豊通の食品安全管理システム(コールドチェーン含む)で日本までの輸出行程を管理しています。これも最終市場(日本)が要求する条件に見合う加工ビジネスです。

ベトナム主導の連携
ベトナムには食品卸業(wholesale)を営む会社組織が多数存在します。彼らの多くは卸業(農産物を買い加工業者或いは市場に売る)の領域を出ませんが、農産品の質、流通市場、最終製品(例えばスーパーマーケットでの売れ筋製品)の情報を持ち合わせています。

それらの情報を商品開発に活かし、先ずは大手のリテイル業界(加工業に投資するとの前提)との協業で、商品を具体化し卸企業が一次産業と加工の連携を果たすことが一つの方法かと推測します。

日本では地方の市町村生産協同組合(JAも出資している)が連携の役割を果たしています。例えば、地元野菜を原材料とするドレッシング(調味料)等です。この場合、いきなり全国ブランドを狙うのでなく地域限定のミドルブランドを狙います。ベトナムではどのような形式で連携を図れるかが今後の課題です。