ベトナムのスーパーマーケット

2019年、ベトナムの一人当たりGDPは2,500米ドル強、南部ホーチミン市単独だと6,000米ドルを超え、同国の消費経済、取り分け小売部門の今後の高成長は期待されています。

全分野の小売部門売上高は、全国でおおよそ2,310億米ドル、その25%は近代的な小売販売ルート(百貨店、大型モール、スーパーマーケット、コンビニ)で売られています。

東南アジア他国の近代的な小売販売ルート比率を見ると、フィリピン35%、マレーシア50%、シンガポール90%で、ベトナムの小売は、いまだ伝統的な小売販売ルート(ベンタン市場のような露店、卸・小売店)に依存していることがわかります。

政府は「消費経済成長の鍵はこの比率を上げること」と考えているようですが、果たして民間のアプローチはどうなのでしょうか。

そこで、小売部門成長に影響を与える食品・飲料業界に注視したいと思います。
ちなみに、同業界の小売部門の売上シェア(2019年)は510億米ドル(2,310億米ドルの22%)で、近代的な小売販売ルートで売られる比率は14%でした。

2019年は小売部門の激変の年。
ベトナム最大の財閥であるビン・グループが、あっさりと傘下のビン・コマース(スーパーマーケットのVin MartとコンビニのVin Mart Plus)を、ベトナム大手企業のマサン・グループ(畜産物食品加工コングロマリット)に明け渡したました。

食品部門の超大企業が小売部門を飲み込んだのです。

まるで政府の成長戦略に応えるかのように、Vin MartとVin Mart Plusの店舗数増大と、今後の所得向上に合わせた高価格加工食品の品揃えをマサン・グループは公に発表しました。

間髪入れず、数年前からベトナム消費セクターに関心を持っていた韓国4大財閥の1つであるSKグループは、ビン・コマースの株式一部を取得しました。

彼らの狙いは近未来普及するであろうeコマース、つまり「食品のインターネット販売」です。

まさに、マサン・グループとSKグループは同じ船に乗り「食品嗜好の向上と、それに伴う消費増大こそが、小売部門成長のエンジン」を目指し始めたようです。

2019年の食品・飲料輸入額は、おおよそ128億ドル。その内のトップ10は、乳製品、ブロイラー、青果物、牛肉、ノンアルコール飲料、加工食品、豚肉製品、加工野菜、チョコレート/カカオ製品、スナック類です。

日本は約1%のシェアで、韓国もトップ10輸入品目対象では2%シェアに甘んじています。

小売部門に参入したSKグループは最終食品設計に関与し、単独世帯用の販売キット、チルド、調味料、冷凍システム等の韓国の技術、投資及び商品輸入を加速させる可能性が見えてきました。

韓国より早く進出した加藤産業(総合卸)や双日による、プライベートブランド商品開発や動画を利用する販売手法が期待されます。

卸は製造者と消費者を結ぶ要。
B to Bプラットフォームのアドバイザーとしても活躍が期待されます。