ここ数年、ベトナム乳業メーカー最大手のVina Milkは食品業界で売上トップを維持し続けています。
2019年の売上高は25億米ドル(2700億円)でした。小売市場全体で2310億米ドル、その内食品・飲料水市場は510億米ドル、ユーロモニターによると乳製品市場は510億米ドルの10%(51億米ドル)、Vina Milkの売上高はベトナム乳製品市場の50%と理解できます。
ベトナム乳業市場は、Vina Milk(1976年設立の国有企業)と、業界2番手のTH Milk(2006年設立の新しい企業)で市場を占有されています。
毎年、世界乳業メーカーランキング(オランダが情報発信)が公表されています。
Vina Milkは世界ランキング37位という名誉あるステイタス(東南アジアではトップ)を得ましたが、ベトナム牛乳は生乳不足で牛乳の原料に外国産の練乳(コンデンスミルク)や、粉乳を混ぜる調整牛乳という実態もわかりました。
毎年10%以上の成長規模で増える国内牛乳需要に対し、生乳不足は決定的制約要因で政府は国内市場を外資に開放しています。なんと、国内牛乳市場に外国300社が参入しています。しかし、生乳調達は簡単ではないのです。
生乳不足を少しでも解消するため、Vina Milk及びTH Milkはニュジーランド含め国外の乳牛確保に努めています。
生乳を確保できても、国際輸送の時間を考慮すると、常温保存が可能なロングライフ製品(LL)が妥当です。このため、生乳を原料とする国内牛乳の9割はLL市場と言われています。
日本ではチルド牛乳が主流ですが、ベトナムではサプライチェーン段階における冷蔵施設不足が原因でLL牛乳が主流です。外資に100%開放されているベトナム乳業市場ですが、日本からは明治乳業(ちなみに同社の売上高は59億米ドルで世界ランキング13位)が隣国タイの生乳を原料に製品をベトナム国内に輸入販売しています。おそらくLL牛乳と思われます。
ベトナム乳製品市場は、牛乳と発酵乳製品(ヨーグルト)の割合はおよそ80 : 20と言われています。ヨーロッパでは、この比率は50 : 50に近くなり乳製品の多様化を意味します。10年後のベトナムでは、比率が西欧比率に近づくとの専門家意見もあります。
そのためにも、生乳調達と冷蔵施設拡充は欠かせないのです。将来、国民の「食の嗜好向上」、「食の安全」は所得向上とともに増々強調されます。Vina Milkの牛乳がフレッシュミルクと呼ばれるためには、国内でのサプライチェーン強化がどうしても必要です。
昨今、乳業ビジネスはM&Aが盛んで規模拡大に勤しむ欧米流の手法が目立っていますが、ここで6次産業化のような日本式ビジネスも顧みるのはどうでしょうか。規模は小さくとも乳業飼育から多様な乳製品生産と乳製品を食すレストラン事業を包括します。
特定乳業メーカー単独だけでなく複数日本メーカー、冷蔵施設製造、レストラン運営会社の連携が必要です。
Vina Milk社について:Wikipediaより