冷凍フルーツ

ベトナムは新鮮野菜・果物の輸出は世界トップ15に入りますが、同時に加工された多くの農産物(例えば、ジュース、ドライフルーツ等)を輸入しています。国内需要に対し国内供給では足りずタイ、米国から輸入しています。

食品加工技術は発展途上の段階にあり、政府は積極的にFDI(外国直接投融資)を誘致しようと試みていますが、最先端の技術を有す日本を含む西側諸国からのFDI誘致は思うように進んでいません。今回は、野菜以上に加工技術(冷凍、缶詰、ドライ、ジュース)を必要とする果物に焦点を当ててみます。

国内の代表的なフルーツ加工会社は、Vegetable and Fruit Export Import Joint Stock Companyで、ライチ/パイナップルの缶詰、パイナップル・ジュース等を製造しています。また野菜加工品(トマトソース、豆/コーンの缶詰等)も製造しています。

世界に輸出しているというキャッチフレーズですが、元々は国有会社であり、設備面も古く世界市場で競争力を保持出来るかは疑問です。その他にもフルーツ加工を生業とする企業はありますが少数です。

ドライフルーツ

ドライフルーツは抗酸化物質及び繊維質を含んでおり健康に良い食品と言われています。ドライフルーツの生産工程は、①良質のフルーツ収穫、②収穫後の選別(サイズ、不良品)、③砂糖漬け、④硫黄による保存(色等の見栄えを維持)、⑤乾燥工程、⑥パッケージです。

ドライに係わらず加工製品は全て①と②は必要ですが、ドライフルーツ生産者は小規模企業が多く農家との契約及び自ら収穫フルーツ選別機等を用意できる状況ではありません。従って、仲買人から原料を購入しますので①と②の段階で要件を満たさないことが多いです。

また、近年の健康志向から、③と④は省く傾向ですが消費者によっては見栄えを気にしますので④は工程に組み込まれるケースは依然として多いです。⑤は乾燥機械で行いますが、トレイにサイズ別の原料を素早く置くといった工程が機械化されていない場合は品質にむらが生じます。

⑤は機械とマニュアルが混在する工程です。近年、国内需要は増加傾向にあり国内生産がそれに追い付かず輸入が増えています。ドライは古来伝統的な加工手法ですので国内企業あるいはFDIが参入しやすい領域と推測されます。

冷凍フルーツ

食品を冷凍した場合、マイナス1度からマイナス5度の温度帯をゆっくり通過することにより氷結晶が食品の味を劣化させるため、この温度帯を速やかに通過させることが大事です。冷凍方式は、①空気凍結(冷空気を吹き込む、家庭用冷蔵庫)、②接触凍結(冷凍板に食品を接触)、③液体凍結(マイナス35度の液体に食品を漬ける)、④液化ガス方式(液体窒素の利用)、があります。

急速冷凍が鍵で食品加工分野では②の方式が利用されています。最近では高級食材用にプロトン凍結と言われる方式も出現しています。日本はこの冷凍技術でトップクラスです。冷凍食品企業は装置とも言われる冷凍設備に投資できる企業に集約され、ベトナムでは未だ少数の企業に限定されます。

冷凍フルーツの国内需要は増加傾向にあり政府としてはFDI誘致に最も力を入れる領域なので、日本企業への熱い眼差しはあると推測されます。

厄介なのは冷凍後のコールドチェーンの確保です。冷凍輸送車等への投資もあるため投資額が莫大になり国内消費だけでなく輸出も期待されないとFDI誘致は容易ではなさそうです。冷凍フルーツ生産に関しベトナムで最も機械化が進展している企業は、Daveco Gia Lai Tropical Fruit Processing Company(Dong Giao Foodstuff Export JSCの子会社)です。

契約農家との取引(中部高原にあるザライ省)、生産工程に配置する機械は欧州、日本の機械でコンプレックスの形態を取っています。Davecoは冷凍、ジュース、缶詰の領域で野菜も使ったビジネス展開を行っています。

缶詰

現在、フルーツ缶詰企業は約100社あります。缶詰技術は伝統技術範疇にあり、冷凍に比べ企業数は多いです。企業は大企業(KTC Canned Foodstuff Company、Dong Giao Export Import JSC等)から中堅企業まで様々です。

生産工程は、①原料調達(フルーツの場合、追熟をするため生産拠点は原料調達の近く)、②洗浄(皮むき等)、③詰め込み・注液、④脱気(空気を取り除く)、⑤密封、⑥加熱加圧殺菌、⑦検査(X線で不良品検査)です。製品は、マンゴ、パイナップル等の単品が多く、中堅企業の製品は国内消費用です。日本のホテイフーズ(静岡県)が進出しておりフルーツ缶詰を生産しています。

ジュース

現在、フルーツジュース生産企業は約90社あります。フルーツジュースは高度処理技術を要す生産工程を要し、またジュースの種類によって工程は異なり機械設備も異なります。リンゴジュースは、①洗浄、②選果、③液体ジュース(破砕→すりおろし→遠心分離で液体に分離し酸化しないように無酸素状態を保つ)、④液体ジュースの清澄(濁りを除く)、⑤濃縮、⑥殺菌の工程を要します。

一方、マンゴジュースは、①洗浄、②選果、③皮むき、④小石等の不純物除去、⑤果肉除去(pulping)、⑥濾過(filtration)、⑦脱気(degassing)、⑧混濁果汁の均質化(加圧処理)、⑨濃縮、⑩殺菌と、トロピカルフルーツジュースの工程はより複雑です。フルーツジュース生産は高度処理を伴う外国製の機械システムを要します。

現在、90社程の企業があるとのことですが国際標準の商品質を担保する企業は少数と推察されます。今後、ジュース類の消費は増加することが予想され、政府はジュース企業の再編を通しFDIとの協力で競争力を有す少数企業に絞る政策を打ち出しています。

Giavico International Food Company(本社はLoan An省、工場はホーチミン市)は新鮮ジュース生産の代表的企業で、およそ30種の新鮮ジュースを生産しています。原料調達は海外を含め広範囲で製品の多くは輸出しています。

加工技術は最先端の加工機械あるいは生産ライン(商品別:ペットボトル、缶詰、冷凍、工程別:選果からパッケージングまで)を操作し、故障した場合はエンジニアリングの知識と解決能力が要求されます。

しかし、製造企業にそれを要求するのは無理なので、最近は設計・調達・稼働までを包括するEPC契約に則るターンキー事業を展開し、稼働後も顧客の相談に応じるエンジニアリング企業の活躍が目立っています。イタリアのCFT グループ等は代表例です。