食品加工機械

可処分所得向上に起因する食消費の成長、モダン小売部門(スーパーマーケット)の普及、食品加工製品の多様化をバックに、ベトナムでは食品加工機械への需要は高成長が期待されています。

食品加工機械は、加工品(製菓、農産品、肉等)別、タイプ(熱処理、均質化、カッティング等)別、最終形状(固体、液体等)別、操作(自動、手動、半自動)別に実に多種多様に製造されておりメーカー数も多いのが特徴です。

市場は欧州、日本、米国製で席巻され、ベトナム製は(滅菌工程に使用する高熱水蒸気、熱処理の一部)に供するタンク等の容器製造が主です。今回、食品加工機械の全体像を理解してベトナム市場を概観してみます。

ここでは、Thomas International(food業界のコンサルタント)作成の「Overview of food processing equipment」を参照し、食品加工の生産サイクルに合わせ食品加工機械を整理します。

準備(Preparation): 加工前の原材料処理に係る工程

  • Cleaning: 異物・化学物質の除去、洗浄、滅菌を行う。機器はウェットプロセスとドライプロセスに分かれ、前者は洗浄システム機/滅菌機、後者は空気分級機/セパレーター等。
  • Grading: Sorting(選別)に関連し材料の色・香りを維持する前工程。機器は画像プロセッサーが使用される。
  • Peeling: 食べられない箇所を除去して品質を保持。機器は圧力容器で行うスチームピーリング、固定型回転刃を使うナイフピーリングが主流。
  • Sorting: 準備の最終段階。機器は選別機を使用。

機械処理(Mechanical processing): 食品の形状(固体・半固体・液体)やサイズを変え後続プロセスの加工効率性向上を導く工程

  • Size reduction: 固形材料のサイズ縮小。機器はクラシュイングとカッティング/チョピングに分かれ、前者は圧力ミル、後者はスライス機/肉挽き等です。
  • Size enlargement: 固形材料の平均粒度を増加させる。機器は押し出し、凝集、成形に分かれ、押し出しは押し出し機、凝集は高速攪拌機、成形はパンや製菓(ビスケット)用のフォーミング機器等です。
  • Homogenization: 固形材料の均質化。機器はホモジナイザー。
  • Blending: 異なる材料を混合させ材料の食感向上を目指す。機器は材料形状によって異なり、液体ミキサー、生地ペースト用ミキサー、固形物ミキサー等です。

熱処理(Heat processing): 加熱または冷却を目的に熱伝導装置(チューブ管/金属板)と熱処理装置を使用。熱処理は食品品質への影響が大きいので最重要工程。

  • Baking: 加熱された空気(対流、伝導)、または直接加熱により微生物を除去し材料に含まれる水分を取り食品の旨味を出します。機器はオーブンが主流でパン・製菓に適用されます。
  • Branching: 加熱された水蒸気により微生物を減少させ原材料から余分な空気を除去し品質を柔らかくします。冷凍野菜・果物に適用し、脱水・冷凍の前の段階で行う工程です。機器はスチームブランチャーです。
  • Dehydration: 脱水を意味し、ドライ食品に適用。微生物増殖、酵素活性による食品腐敗を回避でき食品長期保存に有用。機器は、乾燥機、真空乾燥機、フリーズ乾燥機等です。
  • Evaporation: 蒸発を意味し、固形素材の濃度を上げます。トウモロコシを原料とするコンスターチ(でんぷん)は代表的食品です。小麦粉に替わりコンスターチを加えることで食感がさくっとして製菓(クッキー)に必要な加工技術。機器はエバポレーターです。
  • Frying: 揚げを意味し、油を使用して180度までの温度で材料を揚げます。機器はフライヤーで様々の揚げ食品に利用されます。
  • Roasting: 焙煎を意味し、熱処理はbakingと同じ。焙煎はバーベキュー肉、コーヒー、ナッツ、野菜に適用され食欲を増す食感が得られます。機器は焙煎用オーブンです。
  • Refrigeration: 冷蔵を意味し、熱は高温から低温に伝導する性質を利用する熱交換機を使用します。零度以上の場合、冷却水循環装置(チラー)と呼ばれる機器を使用し、零度以下で冷蔵/冷凍する場合は冷凍庫を使用します。食品保存の温度管理を要求される場合、チラーでは冷却能力をあらかじめ設定する複雑な計算を要します。

上記は、食品生産サイクルに沿って説明していますのでタイプ別/加工品別/最終形状別が混在しています。実に、多種多様の加工機械があります。それに、包装機械、食品品質計測機械も加わりますので食品加工分野の機械製造は一つの産業業種と言っても過言でありません。ベトナムで活躍する企業は欧米勢が主力です。

Alfa Laval(スェーデン): 熱交換器製造 

GEA Group(ドイツ): 食品加工機械を含むコンポネートサプライヤー 

Fenco Food Machinery(イタリア): 野菜・果物加工プロセシングライン 

Krones AG(ドイツ): 充填、包装機械 

JBT Corporation(米国):食品加工エンジニアリング(設計、製造)、

Marel (アイスランド):鶏肉・水産加工プロセシングライン

Buhler AG(スイス): 食品加工含むプラントメーカー

上記の企業は世界各国に展開する多国籍企業です。共通する特徴は顧客の生産環境・条件に合うエンジニアリング解決を顧客に提示して生産ラインの設計及び加工機械を選定することです。一方、ベトナム/東南アジアで活躍する日本勢は、

エムラ販売:野菜加工(スライス等)機械製造

ヤナギヤ:食品加工全般の機械製造

日本企業も顧客要求条件に見合う生産ライン設計及び加工機械選定を行いますが世界展開を行っている欧米勢に比し特にエンジニアリング解決に資する情報提供は優位に立てないことも事実です。

エムラは欧米勢との協力で互いに情報提供を行っています。日本国内にはそれぞれの技術(熱交換等)に特化して世界レベルの技術を有す中小企業が存在しますがそれらを海外展開に活かせない環境下にあると言ったら過言でしょうか。

食品加工のサイクルで勝負する時期に差し掛かっており、企業単独で出来ないなら、政府(経産省)主導の企業を組み合わせる輸出戦略も必要なのではと思います。