毎年、アジア各国を対象にベスト50レストラン(Asia’s 50 best restaurants)が選ばれ(ランク付け)、今年は3月16日に香港で開催されました。同時に、昨年の50ベストレストランのシェフにより「Essence of Asia」コレクションと呼ばれる毎年恒例の「アジアのベストレストラン50」リストも公表(ランク付けされていない)されました。これは、「食の信頼性」、「食文化」、「地域社会へのこだわり」の観点で選ばれ、ベトナムでは4つのレストラン、ハノイの「Pho Bat Dan(ベトナム麺フォー)」、ホーチミン市の「Ngoc Suongシーフードレストラン」、ホーチミン市の「Pizza 4P」、ホイアンの「バンミー女王」が選ばれました。食のグローバル化によりベトナムのPho(フォー)は日本でもかなり知れ渡る外国食の一つになりました。
ところで、「バンミー」とは何でしょうか。ベトナム語ではBanh Miと書きます。これは、フランス人が常食するbaguette (バケット)の中にベトナムの野菜や燻製肉(豚肉)等を挟むサンドイッチです。
ベトナムは1954年まで仏領でした。仏領時代、小麦を生産しないベトナムではバケットを含むパン類はフランスから直接輸入され、その殆どは統治者フランス人の食に供されベトナム一般国民には無縁の食べ物でした。しかし、仏領解放後、小麦は西側(主に米国)からの貨物船によってホーチミン(当時はサイゴン)に陸揚げされ、現地のパン職人によるバケット生産が本格化し、現地の野菜や燻製肉を挟むBanh Mi(バンミー)がサイゴンの街中で流行りました。その後、ベトナム戦争に突入し北側の勝利に終わると南のBanh Mi食文化は徐々にハノイにも浸透しました。
筆者が最初にハノイ入りした1990年代前半、バンミーはホテルのレストランでしか味わえませんでした。それも、バケットと中に挟む物は別々に出され食べる人がサンドイッチを作った記憶があります。その後、2000年代に入ると西側の外国人の多くがハノイに常駐し、同時にハノイの庶民がパン食に目覚め、南のバンミーが徐々に食されバンミーを売るお店が多くなりました。
近年になってバンミーはベトナム食の顔になりました。先日、香港の代表的メディアであるサウス チャイナ モーニング ポスト(South China Morning Post)は「How Vietnam’s banh mi sandwich went global and went vegan to thrill yet more fans(ベトナムのbanh miはグローバル化して、より多くのファンをワクワクさせる菜食主義になった)」というニュースを配信しました。
ベトナムの店頭で買えるバンミーはお客のお好みに合わせピクルスと燻製肉の組み合わせ、野菜ピクルスだけ(菜食主義)と自由です。バケットに挟む中味も西側の食感を十分に堪能させる味です。サンドウィッチは西側が源、日本では柔らかい食パン生地に挟み庶民の食になりました。それ以上に、ベトナムのバンミーは東南アジアと欧米諸国の都市人が食す共通メニューになったようです。「Essence of Asia」で選ばれた背景が理解できます。