ベトナム 冷凍肉

近年、一つのパックに包装された生鮮食肉(部位表示されたスライス肉等)をホーチミン市/ハノイ市のモダンスーパーマーケットの冷蔵食肉コーナーで見かけます。ベトナムの食肉産業は農産物から家畜飼料(醸造の副産物であるトウモロコシや大麦の蒸留穀物等)を生産する飼料産業の未発達や加工肉生産に必要な資本設備の不足で国内市場に出回る豚肉、牛肉、鶏肉製品は輸入に依存しています。

ここ10年間の食肉輸入は急増しており最近のユーロミート(EUROMEAT)ニュースでは2021年の1月~4月期の食肉輸入量は前年同期間に比べ豚肉は300%、牛肉200%、鶏肉150%の輸入量増加でした。急増する食肉輸入はリテイル(小売)セクターのモダン化及び中間層/富裕層の食嗜好の西欧化が考えられます。

輸入食肉は100%冷凍食肉です。輸入鶏肉は、米国からは手羽元(chicken drumsticks)、骨付き鶏もも(leg quarters)、ブラジルからは手羽先(chicken wings)、韓国からは手羽元を、これらはほぼ香港経由で輸入されています。輸入鶏肉は米国が65%、韓国15%、ブラジル10%のシェアです。最近はロシアからの鶏肉輸入が急増しています。

輸入牛肉は、インドからはバッファロー(buffaloで水牛の肉)で惣菜の肉ボールの原料にされ地方の精肉店(wet markets)で売られています。レストラン及びモダンスーパーマーケット向けにはパラグアイやオーストラリア産の牛肉が使用されています。

豚肉は元々陸続きの中国人の豚肉嗜好の影響を受けベトナム人も国内で飼育された豚(多くは小規模のpig farmsで飼育されている)を食して(ローカル食の領域)いましたが、ここ数年は輸入豚肉(冷凍豚肉)がカナダ、ポーランド、ブラジル、米国、スペインから輸入されています。現在、外国資本を含め780社ほどの豚肉加工(多くは部位別のスライス肉等の生鮮食肉)工場が稼働し始めたところです。

近年、ベトナム食肉市場に対し外国企業は輸出から直接外国投資(DFI)と市場戦略を徐々に変えつつあるようです。イプソス(Ipsos、パリに本社を置く多国籍市場調査コンサルティング会社)によると、3F バリューチェーン(飼育、飼料生産、食肉製造の3工程)を目指すDFIの動きが顕著になっています。

ロシアのプライベート・エクィティ・ファンドは未上場ベトナム企業に出資し北中部タインホア省の経済特区に豚肉の3Fを目指す生産拠点を築く予定です。韓国のCJ グループはリテイル部門の生鮮食肉(豚肉と牛肉)の多様化(部位数を増やし食需要に応える)ため地元企業(飼料、飼育)との連携を構築中です。

タイのCPグループもリテイル部門への生鮮食肉多様化を検討中で地元企業との連携を構築中です。オランダの大手飼料産業(De Heus)は感染症フリーの豚と鶏の飼育への直接投資を行いました。

外国のDFIに対し提携先のベトナム企業の成長も必要です。大手のDabacoグループは積極的に3Fバリューチェーン型ビジネスに転換しつつあります。Hoa Phat グループも飼料産業と豚飼育産業に力を入れています。これは、政府が望む食肉市場・産業発展の道です。国民所得向上、食嗜好の変化等、ベトナムは国内食肉市場を形成する、登山に例えると3合目付近にいるのでしょうか。